理科教師の日常

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令和5年度都立入試理科解説(大問3)【地学・天気】

こんにちは理科教師のなおです。

今日は都立高校の令和5年度入試 大問3について解説したいと思います。

問題はこちらを参考にしてください(東京都が掲載している過去問です)

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/ability_test/problem_and_answer/files/release20230221_09/rika_mondai.pdf

 

大問3は教科書にも載っている露点を測定するための実験フラスコ内で雲をつくる実験について説明する問題です。分野としては2年生の地学分野、天気の内容になっています。

 

問1 金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにしたのはなぜか。

 これは実験の操作の理由を簡潔に説明するための問題。この実験は水滴がコップ表面につく際の温度を測定することが目的。一気に温度を下げてしまうと、その間のどの温度で水滴がついたのかがわからなくなってしまうので少しずつ温度を下げていく必要がある。

問2 グラフや実験結果から考える問題

① 午前10時の湿度として適切なのはアとイのうちどちらか

湿度は

 1m3中の空気に含まれる水蒸気量/その温度における飽和水蒸気量*100

で求めることができる。

 午前10時では16.2℃で水滴が見られた。この現象は空気中の水蒸気量と飽和水蒸気量が同じになった時に起こる。そのため、午前10時に空気中に存在する水蒸気量は16.2℃における飽和水蒸気量と同じであることがわかる。グラフからおおよそ13.8g/m3であることがわかる。午前10時の気温は17.0℃であるため、飽和水蒸気量はおおよそ14.5g/m3なので、上の公式に当てはめて計算すると、約95%であることがわかる。

② 1m3に含まれる水蒸気の量は午前10時と午後6時ではどちらが多いか

①でも説明した通り、水滴がコップ表面につくのは温度が下がり、飽和水蒸気量が1m3の空気の水蒸気量と同じになったときである。そのため、<結果1>のデータから午前10時は16.2℃の飽和水蒸気量と、午後6時は12.8℃の飽和水蒸気量と同じ量の水蒸気を含んでいることがわかる。飽和水蒸気量は温度が高いほど大きいため(これはグラフからもわかる)、午前10時の方が多く水蒸気を含んでいることがわかる。

問3<結果2>からわかることをまとめ文章の穴埋め

実験結果からわかることをまとめるというよりは雲のでき方についての説明についてまとめる問題。フラスコからピストンで空気を抜くことで,フラスコ内に残った空気は膨張していく。空気が少なくなっているので、押す力も小さくなり、気圧は下がる。空気は膨張することで温度が下がるため飽和水蒸気量も小さくなっていき、水蒸気が水滴に変化していく。

実際の自然界では上空にいった空気が膨張することで同じことが起こり、空気中の水蒸気が凝結し、雲となっている。

問4<資料>から通過した前線の説明と、前線付近で発達した雲の説明とを組み合わせたものとして適切なものを選べ。

問題文の中に「寒冷前線」と書いてあるので基本的な寒冷前線の知識について説明する問題。暖気が寒気をはい上がるのが温暖前線、寒気が暖気を押し上げていくのが寒冷前線。またこの2つの空気の境界面(前線面)で空気が上昇するため、問3の流れで雲が発生する。その境界面が緩やかな温暖前線では雲も薄く広く広がるため「広い範囲に長く弱い雨を降らせる」が、寒冷前線では境界面が急で狭い範囲に厚い雲が形成される。そのため、「短時間に強い雨を降らせる」。そのため答えは「エ」となる。

 

基本的な問題が多く、理解していればそれほど難しくないが、苦手な人も多い単元なので、まずは基本からしっかりと押さえていくのが良いと思う。