理科教師の日常

中学校理科教員の日常や理科についてのブログ。

【理科・小ネタ】授業で使える映画〜猿の惑星 創世記〜【生物・遺伝子】

みなさんこんにちは!

理科教師のなおです。2020年みなさまはいかがお過ごしですか。

年が明けてすぐに宿泊行事があったり、体調崩しいたりとばたばただったため、かなり久しぶりの投稿になってしまいました。

 

この時期、中学も高校も3年生は受験シーズンということで慌ただしい日々をお過ごしだと思います。

学校によっては受験組と合格組で分けて授業を行なっていることもあるかと思います。

また、学校によっては特別授業ということで学習指導要領外の学習など特殊な授業を行なっている学校もあるのではないでしょうか。

 

私が以前働いていた私立の付属高校ではこの時期各教科で興味関心を高める授業を自由にやってもよいという「特別講座」の期間でありました。

学習指導要領関係なく好きにやっていいとのことだったので、かなり遊びながら授業をしてきました。その中で何度か映画を見せ、そこから特定のテーマについて議論をするという授業を何度か行いました。今回のブログのタイトルでもある「授業で使える映画」のコーナーでは私が授業で見た映画の中で特に生徒たちの議論が活発に行われた題材を紹介していきたいと思います。

 

記念すべき第1回は「猿の惑星 創世記」です。

 

 

1.あらすじ

猿の惑星というタイトルは有名なのでよく知っている人も多いと思います。

原作は1963年にフランスで発行されたもので、最初の映画も1968年に上映されているため50年以上前の映画である。

進化した猿たちが人間を奴隷のように扱う惑星についての映画となっているが、今回紹介する「猿の惑星 創世記」は2010年から製作がスタートした、猿の惑星の前日譚を描いた3部作の第一弾である。

 

大企業製薬会社であるジェネシス社で働く主人公のウィルはウィルスを用いたアルツハイマー遺伝子治療薬ALZ112を作成。チンパンジーの知能が飛躍的に向上するなど一定の成果が見られていたが、そのチンパンジーが実験中に暴れだして射殺されたことから実験の中止が告げられる。この薬に絶対の自信を持っていたウィルは射殺されたチンパンジーが身篭っていた子供に「シーザー」と名付け、自宅に持ち帰って実験を継続させる。

 

シーザーは成長するにつれて母猿のような非常に高い知能を見せはじめ、やがて人間に匹敵する複雑な感情や手話を用いたコミュニケーションが取れるようになる。こうした成果を見てウィルはアルツハイマー認知症の自身の父にALZ112の投与を始める。投薬の成果が見られ、見事以前のような活動ができるまでに病状が回復する。

 

しかしそれから5年経ったころ、ウィルの父にはウィルス薬に対する抗体が出始め、徐々に元の病状が見え始める。また、シーザーも認知症の症状で隣人ともめるウィルの父を助けようとして隣人怪我を負わせてしまい、動物保護施設に送られてしまう。

 

動物保護施設では動物に対する虐待が横行しており、シーザーは人間に対する深い絶望と憎悪を抱き始める。そうした中でシーザーは対立していた施設の猿とリーダー争いを行い、最終的に施設のリーダーとなっていく。

 

一方その頃ウィルは父による人体実験の成果をジェネシス社に報告することで実験の再開の許可を得る。実験の結果さらに強力になったウィルス薬ALZ113の開発に成功。ジェネシス社はこの薬の大量生産に踏み切る。

 

その頃シーザーは人間に対する叛逆計画を画策するも、知能が低い仲間の猿たちを問題視。ウィルの家から改良された新薬ALZ113を盗んで保護施設の猿たちに投与。自分と同等の知能をつけさせ、人間に対する叛逆計画を実行する。

 

猿たちの叛逆計画は施設の猿たちを開放して森へ逃げ出すという形で落ち着いたが、物語はそこでは終わらない。猿たちに対して高い知能を与える新薬ALZ113であったが、人間に対しては高い致死性を示す殺人ウィルスであった。また、飛沫感染による高い感染力も持ち、結果として世界中でパンデミックが発生。抗体ができた一部の人間を除いて多くの人間が死亡。全世界規模での文明社会の崩壊が始まってしまう。

 

 

2.この映画での話し合いのポイント

この映画の中には

 ・新薬開発時の動物実験

 ・動物保護施設における現状

 ・遺伝子操作によって様々な薬が作れる現状

 ・遺伝子操作によって予期せぬ事態が起こる可能性

など多くの話し合いのポイントが含まれています。

 

高校3年生に見せたので、すでに遺伝子組み換えやゲノム編集等は授業で扱っており、便利な面を見せた後であったのでかなり衝撃的な様子を示す生徒が多く見られました。

私は以下の点について理由とともに自分の立場を表明させ、それについて班ごとに議論をさせました。

 ・薬の開発を行ううえで安全性を確認するためにも動物を用いた実験が不可欠である。こうしたことを踏まえたうえであなたは動物実験を今後も継続すべきだと思いますか。

・遺伝子を操作する技術は日々発展しており、現在では様々な分野で用いられている。しかしながらこうした技術は新しい技術であるため、今回の映画のように予期せぬ副作用や事故を起こす可能性も少なからず持っている。こうした事実を踏まえてあなたは今後も遺伝子を操作する技術を発展させていくべきだと思いますか。

・今回の映画の主人公ウィルは認知症の父を治療するために薬を研究所から盗み出したり、強力なウィルスを利用してより効果の高い薬を作ろうとしたことで、人類滅亡につながるきっかけをつくってしまった。あなたから見てウィルの行動は間違った行動だと思いますか。

 

これらの質問に対する回答はどの設問に対しても半々で意見が割れていました。それだけ様々な立場の人がいるということを子供たちに示すことができてたし、さまざまな立場の意見が聞けたため生徒たちもかなり印象に残った様子だった。

 

3.まとめ

今回この「猿の惑星 創世記」で扱った内容、特に遺伝子操作については今後全世界規模で議論が活発になっていく内容であり、今の生徒たちの生きる未来に直接関わってくることなので自分の立場を示すうえでとても重要な内容であるように感じる。便利になっていく技術の中でどこまでをよしとし、どこからを悪とするのか。そうした生命倫理について考えていく中で問題を提起するのにとても適した作品でした。